TCu-1R
規格 : AWS A5.7 ERCu UNS No.C18980
TCu-1Rは、JIS C1020P、C1220P、C1100P 材などの銅板の TIIG、MIG 溶接に使用され、欠陥が少なく、特に溶接ワレは全く起きないことにより広く評価されるにいたりました。
初めからこのような品質が得られたわけではなく、約 40年に及ぶ開発の歴史があります。
これまでの経験により現在では TCU-1R は真空溶解され、また特急地金を採用する事により、ワイヤ中に含まれる酸素量や低融点不純物( P,S, Sn, Pb, Sb, Se, Bi, As )の量が非常に少なく制限され、高品質の溶接線が得られるようになりました。
弊社では、こうした混入不純物が溶接中に銅の結晶粒界に析出することにより溶接ワレやボイドによるポロシティが発生するというコンセプトを持っておりますので、これらを減らすことに全力をあげてまいりました。
C1100P タフピッチ銅が溶接材に適用できない理由も、まさにこの不純物の混入が原因です。
板材に酸素が 200~400ppm も含まれているために、CuO と Cu の共晶や低融点不純物が結晶粒界に析出し、特に溶接中に結晶粒が粗大化すると粒界の総延長が急激に短縮され、単位長当たりの析出量が多くなることにより、結晶粒界の接着強度が低下してワレを引き起す原因となります。
この場合、溶接金属もワレますが、それ以上に HAZ ワレが多く発生しますので、6mmt以上の板材の溶接は非常に難しくなります。
予熱は銅の板厚や大きさによって異なりますが、銅は熱伝導率が鋼の6倍もあり、溶接時の熱拡散が大きいので、予熱は不可欠となります。
通常、400~600℃の予熱が必要で、溶接中も母材をこの温度域に維持してください。
TCu-1R溶接時のシールドガスとして、TIG 溶接にはヘリウムガスかアルゴンガスを、また MIG 溶接には75%ヘリウム、25%アルゴンの混合ガスをお薦めします。
アルゴンガス単独使用より予熱温度を 10~15 %下げることができます。
なお、予熱により銅板表面が酸化されてきますので、フラックス( トービンフローNo.3 )の使用を併せてお薦めします。
フラックスの使用は、溶接金属中の酸素量を低く保つのに有効です。
TCu-1Rは、鋼に直接 Overlay することができます。
しかし、鋼の結晶粒界に Cu が入るいわゆる粒界浸透が起きますが、特に問題はありません。
鋼は銅に比べて熱伝導度が低いので、予熱は不要です。
むしろパス間温度を低く抑えて、銅の溶接金属に Fe が混入するのを防ぐことが大切です。
SUS 材と銅の溶接は可能ですが、共に板厚が厚く( 10mm以上 )熱サイクルがかかる場所などは、SUS 材継手部を予め TR-61( ニッケル )でバターリングした後、その面と銅板の溶接を TCu-1R で行うようお薦めします。
TCu-1R で直づけしますと、SUS のクロムが銅の溶接金属に混入してワレることがあります。
化学成分 [%]
Cu | 98.0以上 |
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Sn | 1.0以下 |
Mn | 0.50以下 |
Si | 0.50以下 |
P | 0.15以下 |
Al | 0.01以下 |
Pb | 0.02以下 |
Others | 0.50以下 |
機械的性質 (As Welded)
耐力 | 60 N/mm2以上 |
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引張強さ | 170 N/mm2以上 |
伸び | 25 %以上 |
製造寸法
Category\Size (mmΦ) | 1.2 | 1.6 | 2.0 | 2.6 | 3.2 | 4.0 |
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TIG (1000mmL) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
MIG (12.5kg巻、15.0kg巻) | ○ | ○ | × | × | × | × |